『ハートで感じる英文法』 NHK3か月トピック英会話 大西 泰斗, ポール・マクベイ

多くの日本人英語学習者の学習意欲をくじく英文法。文法というからには、何らかのルールにそっているはず。なのに何でこんなに例外があるんだ。すべての例外を暗記することなど、無理、無謀。

しかし本書に関して言えば、そんな心配はいらない。

文法は堅苦しいもの、面倒くさいもの---
そんな常識をくつがえす、真に使える英文法だ。最近は、といってもそんなに最近でもないが、この手の、いわゆる「受験英語」ではない、生きた英語を教える良質な教材がぎょうさん出ているから、今の若い人は幸せだ。

わたしが学生だった頃は、「英語の権威」を名乗るベタベタの日本人が、ベタベタの日本人発想で編纂した、ベタベタの英文法書の全盛だった。その難解さときたら、それはもう英語のネイティブにさえ解けない域に達しており、その主な用途は、実力の拮抗した受験生達をふるいにかけることだった。

さらに英語教師。

まがりなりにも教師というもの、その道のお手本とならなければならないはず。しかしその発音はもう、何というか、上手い下手の問題ではなく、やっても無駄という証というか、口の先っちょだけで無理に英語っぽく発音しようとするから、やたら巻き舌になって、絶望的に格好わるい。日本語を発声する要領で発声しても英語の音はでませんよ、という悪い例を地でいったサウンドだ。

これはもうお手本になるか否かという次元を通りこし、噴飯ものである。感受性豊かなティーンエイジャーは、プライドにかけても、あんなみっともないマネはできない。高校の英語の授業では、日本語とも英語とも取れぬ得体の知れない言語を発する教師の声だけが、空しく教室に響いていた。

結果、日本人は、英語のネイティブもたじたじの難解な英文法を解き明かす力がある一方で、日常のたわいもない会話さえできないという、極端にバランスを欠いた英語学習者集団となった。

英語できない病--- 
この日本の国民病の責任は、すべて文部省にあると言ったら言い過ぎか?ぐるりを海で囲まれ、本物の英語に触れる機会の少ない日本人の宿命か?

話せない、聞けない、書けない、でもかろうじて読める、というのが、標準的な日本人の英語レベルではないか。そのないないづくしのなかで、英文法は、日本人が最も得意とし、試験で点を稼げる唯一最大のセクションだ。日本人が英語ができないのを、文法ばかり重視して、実技を軽視してきたその勉強のやり方に責任を転嫁するきらいがあるが、これは間違っている。

英文法は、英語をマスターする上で非常に重要な要素で、避けては通れない。英文法なしでいけるのはトラベル英会話くらいで、これは単語の羅列とジェスチャーと気合いで何とか乗り切れる。しかしそれ以上を目指そうとしたら、英文法はしっかり勉強する必要がある。

完了形はいつ、どんな状況に使うのか。
進行形はいつ、どんな状況に使うのか。
could、should、would mightなどの助詞はいつ、どんな状況に使うのか。
must、can、mayはどうか。
someとany、everyとallの違いは何か。
日本人にとって取っつき難い、aとtheの存在。
そして日本人にとって最大の難関、前置詞の一つひとつには、どんな意味があるのか。

ものごとを立体的に捉えたり、微妙な感情を込めて話すには、文法をきちんと勉強する必要がある。
しかしだ、思うに、文法というのは生きもので、時と場合によって使い方が違ってくるし、使う人の意識ひとつで言い方も使う単語も変わってくるし、微妙なニュアンスは本人にしか分からない。

こんな時にはこんな言い方、こんな気持ちはこんな表現、のような、そんな繊細な使い分けを正確に教えようと思ったら、それができるのは英語と日本語の両方に長けたバイリンガルしかいない。しかし残念ながら、日本には、学校の数ほどもバイリンガルはいない。というか、本物のバイリンガルなら学校の教師などやらないで、稼ぎのいい同時通訳をやるだろう。

っつーことで、個人がそれなりに満足のいける英語力を身につけようと思ったら、国や学校の先生頼りではいけない。所詮、人生そんなに甘くない、世の中のほとんどのことにこの法則は当てはまるようだ。

最後の最後で本音をいうと、本書をいくら勉強したところで、いかなる試験にもパスできないだろう。そのタイトルが表す通り、本書は英語ネイティブのハートに近い発想で描かれているので、正誤を問う試験向きではない。やはり、ある程度厚みのある、英文法を網羅した本格的な文法書を読破することは必要だろう。

その取っつきにくい文法書と格闘し、英文法を体系的に身体にたたき込んだあとで本書を読むと、「なんだ、そうだったのか」といった、池上彰の解説を聞いたような、腹の底にストーンと落ちるような、爽快な理解が得られる。

ということで、幸運を祈る。

posted by ヒロミシュラン at 12:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 英語をモノにする | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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