厳選した好いものを、修理しながら長く使う。最小限のもので、豊かに暮らす。

わたしもアラフォーになって、気分的にはそろそろリタイアが視野に入ってきた。リタイアともなれば、断捨離。多くの現代人を悩ませている多すぎる所有物だが、わたしにとってのそれは、段ボール10箱分の本だった。死闘の末ようやく2箱にまで圧縮し、物の整理の方はほぼ終了した。

当面の課題は、日常生活に必要なものをどうするか、だ。

長年使って、ボロボロになって、捨てる。まさに使いきった状態で捨てた。おめでとう。しかし、捨てたのが「要る物」だった場合、次はどうする?「本命」を手に入れるまで、またどうでもいい「つなぎ」の安物で済ますのか?だとしたら、その本命を手にするのは、いつだ?死ぬ寸前か?

そこで参考にしたのが、これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29ヵ条。本書には、衣食住にまつわるシンプルな考え方が、シンプルに描かれている。

小川糸は、作家。仕事場を兼ねる自宅で、夫婦2人に犬一匹で暮らしている。自由業ではあっても、毎日のスケジュールは決まっていて、午前中に集中して執筆し、午後は好きなことをして過ごす。知人の間では、自然派のミニマリストとして知られているらしい。

一日のほぼすべてを過ごす自宅だから、そのこだわりは半端ではない。キッチンを例にとれば、食器やカラトリー(ナイフやフォークのたぐい)に始まり、布きんに至るまで、機能性と造形美を兼ね揃えた、とことんまで惚れ込んだものを、日常使いとしてフル出動させている。「控え」として仕舞い込まれているものは、何もない。

とりあえず私は賃貸派で、いまんところ住居にこだわる理由がないから、衣食住の「住」の部分は割愛する。

で、まずは「衣」から。

今でこそ10着くらいを着まわし、涼しい顔で過ごしている著者も、若い頃は今の3倍くらいの衣服を抱え、頭を抱えていた。流行ものは1シーズンのみで終わったり、着心地が悪かったり、気に入らなかったりで、ほとんど着ずに処分したものも多かった。

首の太さや長さ、肩幅、胸板の厚み、腰の位置、お尻の大きさ、太ももやふくらはぎの太さやカタチ。そういう個人のカラダの特徴は生涯変わらないから、自然、その人に似合う服のカタチ、デザインというのは決まってくる。

で行きついたのが、服は素材で選ぶということ。肌に直接触れるものだから、ポリエステルやレーヨンなどの化学繊維は着ない。夏は涼しい麻を、冬は暖かなカシミアを。麻もカシミアも非常に軽い素材で、裸でいるのに近い感覚という。

色や柄は、飽きがこないもの。基本はモノトーンで、夏は涼しげな白を、冬はシックな黒を。ちょっと地味すぎるかな、という場合は、一点豪華主義で。首に巻くストールや、靴、アクセサリーでポイントをつけるといいらしい。

服に続いて、問題なのが靴。

わたしはこの年になるまで、年間を通し、スニーカーで乗り切っている。若い頃はこれでも丸の内OLで、ハイヒールやブーツ、最低でもローファーくらいは履いていたが、数年前に八王子に移ってきてからというもの、外履きはスニーカー、内履きはサーファーサンダルで貫き通している。楽でカネがかからないのは嬉しいが、女としてどうかと思う。

そこで著者がお薦めするのが、以下の3足。

外歩きには、ドイツ製のビルケンシュトックのサンダル。
室内履きには、ビーチサンダル。
フォーマルには、フラットシューズ。

30代も半ばを過ぎると、足腰が弱り、ハイヒールがつらくなる。忘れもしない。わたしがハイヒールと決別したのは、八王子を直撃した台風の日だ。交通機関が全面ストップし、帰宅したのが深夜すぎ。交通もマヒしたかも知れないが、ほぼ24時間履き続けたハイヒールのおかげで、わたしの足も完全に感覚がマヒしていた。

ハイヒールは若い子に任せる。もしくは丸の内OLか銀座のマダムにゆだねる。しかし、年がら年中スニーカーでは芸がない。そんな貴方には、ビルケンシュトック、ビーサン、フラットシューズ。これらのシューズは、足に負担にならないだけでなく、軽くて持ち運びに便利、何気にお洒落。旅のお供にも最適だ。





次に「食」。

どの本でも言っているが、やはり食で重要なのは、調味料とダシ。調味料は、値段ではなく、品質で買う。大人の料理の鉄則だ。

著者は、下記の調味料を調合することで、すべての料理の味付けをカバーしている。どれも無添加で丹精込めて作られたものだけに、巷のスーパーで売っている汎用品より若干値は張るが、著者はこれをバルク買いし、小さな容器に移しながら使っているという。

味噌:赤塚商店の麹味噌 若宮みそ
本みりん:白扇酒造の三年熟成本みりん
醤油:鳥居醤油店の杉桶天然仕込醤油
酒:澤田酒造の純米料理酒
酢:村山造酢の千鳥酢

出汁は、鰹節、昆布、煮干し、干し椎茸で引く。
※出汁はとるではなく、「引く」という。


あなたは、あなたが食べたものでできている。
どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう。


3ヶ月前に食べたものが血肉となり、一年間に食べたものが骨になる。あなたの食べたものが、具体的に貴方のカラダを形造っていることは科学的にも証明されている。著者はこれに加え、「モノ」は自分の一部であるという。

著者のポリシーは、使わないものはもたず、使うものは徹底的に厳選する。「これだ」というものを日々の暮らしの中で見極め、少しずつ、自分を完成に近づけていくという。年を重ねるごとに、好きなものが増えていくのが愉しいらしい。

著者の追求するシンプルな生き方について、もう少し補足したい。

著者が今のライフスタイルに行きついたのは、若い頃に旅したモンゴルとドイツに学ぶところが大きい。モンゴルでは、より少ないもので豊かに生きることを、ドイツでは、いいものを大切に長く使うことを学んだという。

モンゴルの遊牧民は、一ヶ所に定住せず、家畜とともに一生を移動して暮らす。広大なモンゴル草原にゲルと呼ばれる移動式住居を建て、その3m四方ほどの小さな空間で、家族みんなが寝食を共にし、きっちり団欒を楽しむ。(各人専用のテレビとか、各人専用の車とかはない)

食事時にキッチンと化したゲルで、著者は、奥さんが一つの中華鍋ですべてをこなすを目撃した。xx用の鍋、xx用の素、xx用の洗剤など、余計なお世話な商品であふれかえっている日本からやってきた著者は、器用に1つですべてを兼ねる奥さんの技に衝撃を受けた。

以来、この遊牧民のやり方に倣い、より少ないものを工夫して使い回し、シンプルに暮らすことを目指すようになったという。




posted by ヒロミシュラン at 13:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | あの作家の日常生活を覗く | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/439484978

この記事へのトラックバック