中村うさぎの「あとは死ぬだけ」を読んで

中村うさぎの あとは死ぬだけ


こういう赤裸々な心情暴露本はあまり好きではないのだが、これまでかなり奔放に、無茶苦茶にやってきた「中村うさぎ」という女性が、ある意味、悟りの境地に至ったものと思われ、加うるに、整形の前後、豊胸手術の前後、心肺停止による入院など、相当に衝撃的な写真なんかも収録されており、とりあえず、本書の内容を確認してみた。

度重なる顔の整形、豊胸手術、買物依存症と借金、ゲイの夫、50代でデリヘル嬢デビュー。

すべて真実である。

しかし、中村うさぎが、頭で、心で感じていること、考えていること、その容赦ない目で見通している、物事の本質の重さに比べれば、整形や売春といった、そんな表面的な、物理的な、物質的なことは、まったく取るに足らない。

自分を客観視できることは大事だが、あまりに度が過ぎると、本人がツラい。そしてそれを包み隠さずそのままズバリ書いてしまうあたり、読んでいてイタい。

例えば、母親について。

彼女は、自分の母親を、狭い世界で毎日同じことを繰り返すだけの二十日鼠になぞらえる。曰く、「わたしが母親を語るときは、いつでも上から目線」これを読んだ人のなかには、「何てえらそうな、傲慢な、可愛げのない子供だろう。一体、何様のつもりだ」と感じる人もいるかも知れない。彼女は、読者のネガティブな反応を承知の上で、これを書く。

母親について「上から目線」で語る中村うさぎは、実は誰よりもよくわかっている。自分を産み、育ててくれた母親。世界でたった一人のかけがえのないその人間に対し、このような憐れみの感情しか抱けない自分。本当はもっと理解しあえる親子でいたかった、そんな、頼りがいのある、同じ土俵で話のできる母親であったら、どんなに素晴らしかったことか。

一番辛いのは、中村うさぎ本人なのだ。

彼女は、自分に嘘がつけない。それ故、自分の母親のことを実物大にしか書けない。生涯、家のなかで家事をすることで満足し、外の世界を見ようともせず、いや、そんな世界があることすら知らない、知ろうともしない、単純で、退屈な女。

二十日鼠を連想させる愚鈍な母親を、冷めきった、軽蔑の眼差しで眺める自分を描く、作家「中村うさぎ」。そこいらのホラー映画より、よっぽど不気味である。

こういう形而上的な表現が、本書を通して語られる。ある意味、かなりハイレベルな心理学書で、ハマる人はハマるだろう。


中村うさぎという女性は、間違いなくインテリである。
これくらいインテリに生まれてしまった女性は、不幸である。

心肺停止後、脚に麻痺が残り、要介護に。もうこれまでの様に思うがままに行動できなくなった彼女だが、こういう状況になってしまった今だからこそ、残りの人生を、女性として、大切に、あたたかく見守られながら、穏やかに生きてほしい。

この発言、上から目線か?



posted by ヒロミシュラン at 09:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | あの作家の日常生活を覗く | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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