人類3大発明とは? キリスト教、インターネット、そしてこれだ!

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

たかが箱、されど箱。

しかしこの「箱」の登場は、20世紀半ばまで労働集約型の典型であった海運業、物流の歴史を塗り替えた。それだけにはとどまらず、当時の産業構造を一変させるくらいのインパクトがあった。この箱を迎えうる港湾設備を整えられるか否かで、世界の都市の勢力図は書き換えられた。世界の中心ニューヨークは、港という意味では、隣の田舎町ニュージャージーに完敗したのだ。

この「箱」のアイデアは、アメリカ片田舎のトラック野郎、マルコム・マクリーンから始まった。当時、物流のネックは、港湾労働者の人件費の高さと生産性の低さだった。港で荷物を揚げ降ろしするより、トラックごと船に積み込んで運んだ方が効率的と考えたマクリーンは、それを実行する。必要は発明の父。いわば海運業のど素人からでた発想であるところが興味深い。

コンテナの発明は、大げさでなく、現代のインターネットに匹敵する大イノベーション。あの「2ちゃんねる」の生みの親、ネットおたくのひろゆきも、本書を絶賛している。

実際、人口の島と呼べるくらいの船というか人口陸地をつくり、その上にコンテナと呼ばれる「箱」を満載して運ぶという非常にフィジカルな行為は、インターネットという非常にバーチャルな行為の真逆の性質をもつ。しかしその発想やスケールは、双方とも互角。

しかし、如何せん、箱だ。

ちまたでは、電気自動車、完全自動運転、AIロボット、月旅行ロケットとか、もっと身近なところでは、スマホ、グーグルホーム、ドローンなど、今をきらめく魅力的な商品がひしめいている。そんななか、あえて「箱」。ネットやデータ活用が騒がれる昨今、そんな物理的な箱のことなど知りたいという読者は少ないだろう。

この本の何がすごいって、コンテナと呼ばれる運送用の「箱」をあえて題材として取り上げた、著者の勇気。そして、コンテナ物語などというくそ面白くもない地味なタイトルの本を世に送り出した、出版社の英断。加えて、こんな一見売れそうにもない原書を、切れのある日本語文書に再現した村井章子の力量。

村井氏は過去に「大暴落1929」「リーン・イン」といった有名どころの著書を訳した経歴をもつ出版翻訳家だが、そのこなれた文章には、然るべきところに、然るべきタイミングで、きっちりユーモアが収まっており、思わず吹き出しそうになる。意図しないところでの笑い。その絶妙な匙加減、まさに職人技。翻訳家を目指す人には、ぜひお手本にしてもらいたい一品。

本書は、とにかく読んでもらうのが一番だ。大は小を兼ねる。大きいことは、いいことだ。物理的な大きさ、金額的な大きさ、とにかくスケールが大きい。てなわけで、非常に優れたビジネス書であり、歴史書であり、翻訳書。この一冊を読むことで、目の前がパーっと開けていく感覚がわかるだろう。

学習ツールとして、本はコスパが高いといわれるが、本書がその見本である。






posted by ヒロミシュラン at 12:08 | Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする