ひとりで海外旅行の団体ツアーに参加した人の悲劇

益田ミリという人の漫画に、一時期はまったことがある。厳密に言うと「はまった」わけではないのだが、その素人じみた下手くそな絵に、平凡すぎる内容を見て、こんなんでも商売になるんだ!と感心したわけである。

この人、平凡を売りにしているが、もし本当に普通の人なら、そんな誰もが感じそうな、誰もが経験したことありそうな話題をネタにして、この競争の激しい業界で長いことやっていけるはずがない。能ある鷹は爪を隠す。実は相当に賢い、いわば宇多田ヒカルのような鋭い感性を内に秘めているのではないか、と考えたのだ。

しかし、それはとんだ買いかぶりであったことが段々と明らかになっていった。

この人、日常的な出来事からヒントを得て、それを漫画にすることで生計を立てているが、実は、本当に普通なひとだったようだ。彼女の著書を読んでいくうちに、うすうす感じてはいたのだが、その凡庸っぷりが決定的になったのが、最新作のこの作品だ。

美しいものを見に行くツアーひとり参加

アラフォーになった著者が、まだ体力のあるうちに見たいものを見ておこうという魂胆だが、行き先が海外の場合、ひとりでは不安ということで、旅行会社が企画した団体ツアーにひとりで参加した、という話だ。具体的な目的地は、北欧、ドイツ、フランス、ブラジル、台湾。

当然のことながら、どのツアーも段取りは同じ。とりあえず現地へ飛び、あとはひたすらバスで観光地をまわるというもの。驚くのはその価格で、どれも目ん玉が飛び出るくらい馬鹿高い。たかが1週間かそこらで30万とか40万が普通。ブラジルに至っては、1週間で約100万円!ぼったくりもここまでくれば立派なビジネスだ。

しかも、夕食は各自自由という日が含まれており、現地における散財も馬鹿にならない。土産物屋にも強制的に連れていかれるから、当然そこでも散財する。非日常的な環境におかれると、人は気が大きくなるのだろうか。日本にいたら絶対買わないようなものを、気安く買う。まったく、旅行とは、日々の労働から得た金をすべて使い果たすためにあるようなものだ。

で、著者の言う「美しいもの」だが、それは下記の通りだ。

1.北欧のオーロラ
2.ドイツのクリスマスマーケット
3.フランスのモンサンミッシェル
4.ブラジルのリオのカーニバル
5.台湾の九份の平渓天燈祭

参加者の大半は女性で、彼女らの関心事と言えば:

1.トイレ
2.バスの席
3.食事時の席

どこへいってもまずトイレが心配。時間内にトイレを済ますことに振り回され、観光どころの話ではない。加えて、益田ミリはひとり参加のため、食事時の席配置にも神経をとがらせる。ひとりぼっちになりたくないというより、一人でいてかわいそうな人に見られたくない、という見栄からだ。

現われないオーロラを待ち続ける過酷な日々。ダンス甲子園のようなリオのカーニバル。激混みの九份ランタン飛ばし。1日だけのモンサンミッシェル(著者的にはパリ自由行動2日は不要で、モンサンミッシェルを3日にしたかったようだ)。クリスマスマーケットだけはそれなりに楽しんだようだが、時間がなくて駆け足で終了。

どのツアーを見ても、観光を楽しむというより、むしろ罰ゲームのように見える。

彼女の愚かさは、「海外旅行は慣れたもの」といいながら、外貨はいつも成田空港で購入しているところ。ホーム空港における換金はレートが最悪なのは常識で、そこでそれをやるのは馬鹿だけと相場が決まっている。1回目、いや、百歩譲って2回目で気づくならまだしも、5回やってもまだ気づかないところが天然だ。

しかし彼女の愚かさは、そんな些細な事ではない。たかが数日の旅行にうん十万もかけるところ、そして、団体ツアーの欠点を認識していながらも(もしかしてしてない?)それを何度も繰り返すところだ。

旅行会社にとって、ホテルも食事も最低ランクに抑えれば、それだけ儲けは増える。つまり、ツアー参加者は、旅行会社がパンフレット上の文言を反故にして詐欺扱いされない最低限度のものを提供されている、というのは普通にわかるだろう。

しかも、団体ツアーの宿命として、時間配分、スケジュールはきっちり決められている。やりたいことはやれない。やりたくないことはやらされる。しかも、高い料金を払ったのだからと何が何でも目的を達成しようとする。どんなに寒くとも、どんなに暑くとも、どんなに眠くとも、どんなに体調がわるくとも、根性でそこにいる。無理してでも、楽しんでるふりをする。

そんなのはレクリエーションでも何でもなく、単なる罰ゲーム、我慢大会であろう。

そんな団体ツアーに既に5回も参加し、懲りずにまだやる気でいる著者。しかも、痛恨のお一人様参加だ。人はひとりでいる時に孤独を感じるのではない。孤独は、団体のなかでのみ感じられる。何が悲しくて、一人で団体ツアーに参加するのか?益田ミリさん、あなたはドMですか。大丈夫ですか?他人ごとながら、まったく心配になる。

ということで、ひとりで団体ツアーに参加しようと考えているあなた、悪いことは言わない、本書を一度読んでからでも遅くない。常識あるあなたなら、そんなことは死んでもすべきでないことを一発で悟るだろう。

くれぐれも、外貨獲得はアウェイ空港で必要最低額のみとし、あとは街中の両替屋でやるように。両替の鉄則である。






posted by ヒロミシュラン at 07:11 | Comment(0) | 大ブーイング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする