生後2年までの赤ちゃんほどかわいい存在はこの世にない

母ではなくて、親になるは、山崎ナオコーラの出産エッセイ。

注)山崎ナオコーラは、日本人女流作家。名前がデフォルメされているため一瞬戸惑うが、この人はれっきとした日本人であり、女性である。

山崎ナオコーラの最大のヒット作は、処女作の人のセックスを笑うな だ。インパクトの強いタイトルだけに、聞いたことのある方もいるかも知れないが、以降、これ以上のヒット作はない。過去5回、芥川賞候補にノミネートされ、5回とも落選。あと1回落とせば史上最多の落選数を記録する、日本でもっとも賞に縁のない作家だ。

芥川賞落選率の高さは、ナオコーラは無能な日曜作家ではなく、筆一本で生計を立てられる「実力派」であることを意味する。本人的にもその自覚はあるようで、日本のメジャーな文学賞にことごとく嫌われ、毎年ノーベル文学賞を逃し続けている村上春樹に同志意識をもっているようだ。

さて、そんなナオコーラが初めて赤ちゃんを産んだのが35歳の時。その1年前に流産し、苦しい妊活を経ての快挙だ。ナオコーラが夫に選んだのは、町の小さな書店に勤める、しがない男子。給料はナオコーラの半分にも満たず、貯金はゼロ。さすがに「ひも」とまでは言わないが、経済的にすべてをナオコーラに依存する、やさしさだけが取り柄の草食男子だ。

ナオコーラはかなり自意識の高い女子らしく、フェミニストであり、動物愛護、環境保護などにも関心をもっている。ただ、何事にも「はまる」ことのできない醒めた性格のため、原理主義的な言動には反感をもってしまう。いわゆる、知的水準の高い、何かとめんどくさい女性だ。

わたしは「山崎ナオコーラ」というふざけた名を書店で見て知っているだけで、作品を読んだことはない。だからこの人の作家としての才能をどうこう言うことはできないが、この育児エッセイを読むに限っては、ブラボー。赤ちゃんのしぐさを、存在そのものを、ここまで可愛らしく表現した文章を読んだのは初めてだ。

とにかく、赤ちゃんのしぐさや、表情の描写が秀逸。ナオコーラの赤ちゃんが特別こんなにかわいいのか、それとも、赤ちゃんというのはこんなにもかわいいものなのか。乳児の存在は犬や猫に近いというが、それしても、かわいすぎる。赤ちゃんがこんなにかわいいものなら、わたしも1匹ほしい。是が非でもほしい。

赤ちゃんを産んだことのない女性諸君。いっぺん、本書を読んでみてくれたまえ。100発100中、赤ちゃんがほしくなる。夫はどうでも、赤ちゃんだけは、ほしくなる。恐らく、世の中で生後2年くらいまでの赤ちゃんほどかわいい生き物は、存在しないだろう。それを、わたしは本書を読んで確信した。

こんなにかわいい赤ちゃんのしぐさを毎日観察できるのなら、育休とか、待機児童とか、どうでもよくないか?赤ちゃんの面倒をみる以上に楽しくて大切な仕事などあるまい。赤ちゃんの可愛さ絶頂期の2年間を体験できるなら、全てを放棄してもお釣りがくるはず。会社など、休んだれ、辞めたれ。その後の人生は、その後のことだ。

ということで、赤ちゃんのしぐさがどんだけかわいいかを知りたかったら、母ではなく、親になる、を読んでみてくれたまえ。




posted by ヒロミシュラン at 12:02 | Comment(0) | あの作家の日常生活を覗く | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする